はじめに:誰もが経験したことのある“長い待ち時間”
病院で3時間待って、実際の診察は3分。
「たったこれだけのために…」とため息をついた経験は、誰にでもあります。
私自身、長年看護師として医療現場に立ち、そして現在は家族として医療に向き合っています。
“待ち時間の長さ”は患者さんにとって大きなストレスですし、家族としての負担も少なくありません。
しかしこれは、医師や看護師個人の問題ではありません。
**日本の医療制度そのものが抱える“構造的な矛盾”**が原因なのです。
この記事では、その背景をわかりやすく解説し、
さらに「かかりつけ医」の役割がどれほど重要なのかをお伝えします。
なぜ大病院で“混雑”と“短時間診療”が起きるのか?
● 理由① 大病院は“重症患者”を診る場所だから
大病院の本来の役割は、
- 専門的な治療
- 高度な検査
- 手術や入院が必要な患者への対応
です。
ところが現実は、風邪・胃腸炎・花粉症など軽症の患者が集中し、
結果として外来がパンクしています。
● 理由② “最初から大病院へ行く文化”がある
日本では紹介状がなくても大病院を受診できます。
この“自由度の高さ”が逆にデメリットとなり、
- とりあえず大病院へ
- 軽症でも専門医なら安心という心理
が働き、混雑が慢性化しています。
● 理由③ 病院の経営構造が「外来を減らせない」
大病院は本来、外来を減らしたいのが本音です。
しかし、外来が減ると収益が下がり経営が苦しくなるという矛盾があります。
そのため、
- 外来は多い
- 1人あたりの診察時間は短くなる
- 結果として「3分診療」になる
という流れが起きているのです。
「選定療養費」とは何か?
大病院で紹介状なしに受診した時、
**初診時選定療養費(5,000〜7,000円程度)**が請求されることがあります。
これは罰金ではなく、
「軽症の方は地域のかかりつけ医を受診してください」
というメッセージなのです。
本来あるべき医療の流れ
「かかりつけ医」→「大病院」
① まずは“かかりつけ医”で診る
軽い症状や慢性疾患の管理は、地域のクリニックで十分対応できます。
- 風邪
- 花粉症
- 軽い腹痛
- 血圧・糖尿病など生活習慣病の管理
などは、かかりつけ医の範囲です。
② 必要な場合のみ、大病院へ紹介
専門的な治療や検査が必要なときに、
紹介状を持って大病院へ行くのが理想の流れです。
紹介状があれば、
- 待ち時間が短い
- 検査がスムーズ
- 適切な診療にたどり着ける
とメリットが大きくなります。
看護師として見てきた「かかりつけ医の価値」
現場で感じてきたことがあります。
それは、
かかりつけ医は患者の“生活”まで含めて見てくれる存在だということ。
- 普段の体調を知っている
- 家族背景まで理解してくれる
- 気軽に相談できる
- 小さな変化に気づいてくれる
特に認知症の患者さんは“普段の姿”を知っている医師でなければ、
小さな変化を見落とす可能性があります。
私自身、妻の認知症ケアで、
かかりつけ医の存在がどれほど心強かったか実感しています。
日本で「かかりつけ医」が浸透しない理由
大きく3つあります。
- 日本人は“病院信仰”が強い
- 自由にどこでも受診できる制度
- 高齢者が複数の医師にかかり、情報が一元化されない
これにより、
軽症でも大病院へ → 混む → 3分診療
という悪循環が続いています。
良い「かかりつけ医」の選び方
ポイントは5つです。
- 自宅から通いやすい
- 症状だけでなく生活背景まで聞いてくれる
- 必要な時は専門医に紹介してくれる
- 質問に丁寧に答えてくれる
- 生活習慣のアドバイスもしてくれる
軽い症状の時こそ受診し、
少しずつ関係を作っていくのがおすすめです。
おわりに:医療を“うまく使う”という考え方
「大きい病院だから安心」という考えは、
半分正しくて、半分は間違いです。
大病院は“最後の砦”。
日常的な健康管理は、かかりつけ医に任せるのが賢い医療の使い方です。
医療をうまく使うことで、
あなた自身の負担も、家族の負担も減ります。
そしてそのことが、
“3時間待ち・3分診療”という矛盾を減らす第一歩にもなります。

コメント